競泳水着を選ぶ際、「種類が多すぎてどれを買えばいいのかわからない」と悩む方は少なくありません。一見すると似たようなデザインに見えても、競泳水着は「素材」「公式ルールの適合」「形状(カットスタイル)」によって明確に種類が分けられており、それぞれ目的が全く異なります。

この記事では、各水着の性能的な違いから、男女別のカットスタイルの名称まで、競泳水着の全種類を徹底的に解説します。

競泳水着の「種類」を決める3つの基礎知識

競泳水着の種類を深く理解する上で、まず知っておくべき要素が「素材」と「公式ルール」です。これらが組み合わさることで、後述する水着の「クラス(カテゴリー)」が決定されます。

1. 素材の違い:布帛(ふはく)とニット

競泳水着に使われる生地は、大きく分けて以下の2種類が存在します。自分のレベルや目的に合わせて選ぶことが重要です。

布帛(ふはく)素材

糸を縦横に「織った」生地です。伸縮性が非常に低く、着脱には苦労しますが、その分強力な着圧(コンプレッション)を生み出します。この着圧が筋肉のブレを抑え、水中での理想的な水平姿勢(ストリームライン)を強力にサポートします。主に上級者や、0.01秒を削り出すレース専用のモデルに採用されます。

ニット素材

糸を「編んだ」生地です。私たちが普段着ている衣服に近い構造で、伸縮性が高く、柔らかいフィット感が特徴です。着脱がスムーズに行えるため、水泳初心者からベテラン選手の毎日の練習用まで、幅広く使われる標準的な素材です。

2. 公式大会に出るための「WA承認(旧FINA承認)」

競技の公平性を保つため、世界水泳連盟(WA:World Aquatics、旧FINA)が定める厳しいルールに適合した水着が存在します。基準をクリアした水着のお尻や腰の部分には、「WA承認マーク(QRコード付きの白い枠)」がプリントされています。

公式の競泳大会に出場する場合、この承認マークがついた水着を着用することが義務付けられています。練習でのみ使用する場合は気にする必要はありませんが、大会への出場を見据えている方は必ずチェックすべきポイントです。

3. 「素材」と「承認」は水着クラスで決まる

「布帛とニット、どちらを選ぶべきか」「WA承認は必要か」と、各要素を個別に悩む必要はありません。水着のラインナップは、次に解説する「4つのクラス」やメーカーが展開する「シリーズ」によって、用途ごとに最適化された状態でパッケージ化されています。

自分が水泳をする目的を明確にすれば、自然と選ぶべき種類が決まります。

【性能・目的別】4つの水着クラス

水着の性能と使用シーンに応じて、大きく4つのカテゴリーに分類されます。ご自身の目的に最も合うクラスを見つけてください。

クラス主な素材WA
承認
特徴・主な用途代表的なシリーズ例
(ブランド)
高速水着布帛(一部ハイブリッド)0.01秒を争うトップレース用。最強の着圧と姿勢サポート。寿命が短く高価。ファストスキン(SPEEDO)、アクアフォース(ARENA)、GX ソニック(MIZUNO)
競泳水着高機能ニット(一部布帛)地方大会からマスターズまで対応。適度な着圧と着脱のしやすさを両立。フレックス シグマ(SPEEDO)、アクア ストライプ(ARENA)、GX ソニックストリーム(MIZUNO)
練習用水着耐塩素ニット(ポリエステル等)毎日のハードな練習向け。耐久性と耐塩素性に特化。大会着用不可。ターンズ(SPEEDO)、タフスーツ(ARENA)、エクサースーツ(MIZUNO)
スポーツ水着厚手ニットジムや健康維持目的。着心地、着脱の容易さ、体型カバーを最優先。スピードフィット(SPEEDO)、アクアトレーニング(ARENA)

高速水着(トップレースモデル)

  • 主な素材: 布帛(ふはく)
  • WA承認: ほぼ全て承認済み

自己ベスト更新やトップレベルの大会で0.01秒を競うための、各メーカーの最高峰クラスです。布帛素材による強固なサポート力と、極限まで水の抵抗を減らす設計が特徴です。一方で、着脱に数十分かかることも珍しくなく、生地の伸びや撥水性の低下といった寿命も非常に短い、まさに「レース本番専用」の勝負用競泳水着です。

競泳水着(スタンダードモデル)

  • 主な素材: ニット(一部に布帛を使用する場合もあり)
  • WA承認: 大半が承認済み

中高生の部活動や市民大会、マスターズ水泳まで幅広く対応する標準的なクラスです。ベースにニット素材を使用しているため着脱がしやすく、かつレースで戦える適度な着圧や撥水性を両立しています。「初めて大会に出る」「着やすさもタイムも妥協したくない」という方に最適です。

練習用水着(トレーニングモデル)

  • 主な素材: 耐塩素ニット(ポリエステル100%など)
  • WA承認: 承認なし

毎日のハードな練習に耐える「耐久性」に特化した種類です。プールに含まれる塩素は水着のポリウレタン(伸縮素材)を劣化させますが、このモデルは塩素に強いポリエステルをメインに構成されているため、非常に長持ちします。「長持ち水着」「タフスーツ」などとも呼ばれます。厚手で透けにくく練習には最適ですが、素材の規定により公式大会では着用できません。

スポーツ水着(フィットネスモデル)

  • 主な素材: 厚手ニット
  • WA承認: 承認なし

ジムでの利用や健康維持、水中ウォーキングなどを目的とした種類です。着心地の良さ、着脱のしやすさ、そして体型カバーや露出の抑制を最優先した設計になっています。上下を留めるスナップボタンが付いていたり、カップが縫い付けられていたりと、快適に体を動かすための工夫が施されています。

【レディース】カットスタイルの種類と特徴

女性用の競泳水着の形状は、主に「レッグカット(脚の付け根)の高さ」と「丈の長さ」で分類されます。動きやすさと露出度のバランスで選びます。

スタイル名露出度股関節の可動域水流抵抗・着圧
ハイレグ極めて広いやや少ない
ミドルレグ広い標準的
ローレグ標準的やや多い
ハーフスパッツ極低広い(着圧あり)非常に少ない
セパレート中〜低標準的多い

ハイレグ

足の付け根のカットが最も高く切れ上がったスタイルです。脚の可動域を最大限に広げるため、平泳ぎや個人メドレーなどダイナミックな足の動きを必要とする種目で好まれます。布面積が少ないため水への抵抗を抑えられる、競技志向の強い種類です。

ミドルレグ

標準的なカットの高さです。ハイレグほどの露出の抵抗感はなく、かといって動きを妨げることもないため、安心感とパフォーマンスのバランスが最も取れています。幅広い層のスイマーに選ばれる定番の種類です。

ローレグ

脚の露出を極力控えめに設計したスタイルです。お尻をすっぽりと包み込むような形状で、安定した着心地を求める方や、フィットネスから本格的な水泳へとステップアップする方に強く支持されています。

ハーフスパッツ

太もも部分を覆う膝上丈のスタイルです。現在のレースおよび練習において主流となっている種類です。太ももの筋肉の揺れを抑える着圧効果があり、水の抵抗を減らすとともに、疲労の軽減にもつながります。露出が少ない点も人気の理由です。

セパレート

トップスとボトムスが上下に分かれたスタイルです。着脱が非常に楽なのが最大のメリットです。主に水中ウォーキングやダイエット目的、フィットネスジムでのアクアビクスなどで選ばれます。競泳用としては水の抵抗が大きいため不向きです。

補足:背中の形状(バックスタイル)

レディース水着を選ぶ際、上記のレッグカットに加えて「背中の開き方」も重要なバリエーションとなります。

オープンバック

背中が丸く、あるいは大きく開いた形状です。肩甲骨の動きを一切妨げないため、腕を大きく回すストロークがしやすく、競技志向のスイマーに好まれます。水抜けも良好です。

クローズドバック

背中の露出を抑え、生地の面積を増やした形状です。背中全体を包み込むためホールド感が高く、安心感があります。フィットネス用や練習用に多く見られます。

レッグカットの種類とこのバックスタイルを掛け合わせることで、自分の体型や泳ぎ方に最適な1枚を見つけることができます。

【メンズ】カットスタイルの種類と特徴

男性用水着の形状は、主に「脇丈の長さ」と「着圧範囲」によって分類されます。時代とともに主流のスタイルが変化してきました。

スタイル名脇丈の長さ股関節の可動域水抵抗・着圧効果
ビキニ(Vパンツ)極めて短い最大極めて低い
ボックス短い(数cm)広い中程度の着圧
スパッツ長い(膝上)標準的最大の着圧

ビキニ(Vパンツ)

脇丈が極めて細く、ブリーフのような形状のスタイルです。脚の可動域が最も広く、素材による締め付けや制限を最小限に抑えたい競技志向の強いスイマーに選ばれます。かつては競泳の主流でしたが、現在レースでの着用は減り、主に感覚を研ぎ澄ますための練習用として根強い人気があります。

ボックス(ショートスパッツ)

股下が数センチから十数センチある、四角い形状のスタイルです。ショートスパッツとも呼ばれます。Vパンツに比べて露出が控えめで安心感があり、股関節の動きも妨げません。日々の練習用(トレーニングモデル)として、学生から大人まで最も一般的な種類です。

スパッツ(ハーフスパッツ)

膝上周辺までをしっかりと覆うスタイルです。広範囲に及ぶ生地の着圧により、太ももの筋肉のブレを抑え、水の抵抗を最小限にする効果が最も高いのが特徴です。現在の公式大会や本格的な練習において、絶対的な主流となっている種類です。

ご自身の目的(レースか練習か、タイムか快適さか)を明確にし、本記事で解説した「クラス」と「カットスタイル」を組み合わせることで、失敗しない水着選びが可能になります。ぜひ「競泳水着.com」で、あなたにぴったりの一着を探してみてください。